上司と部下は分かり合えないのか?

人事担当者の方と話をしていて、みなさん悩まれていると感じるのが若手の育成です。

「最近の新入社員は、社会人として求められる最低限のコミュニケーション能力が身についていない」「今の若い社員は、何を考えているかわからない」

そういった声をよく耳にします。

一方、若手の方と話をしていると、やはり彼らも同じように上司との関係に悩んでいると感じます。

「自分の考えや言いたいことがなかなか上司に伝わらない。どうすれば上司とうまくコミュニケーションできるのだろうか」

そんな質問を受ける機会が増えているからです。

上司は若手とのコミュニケーションに悩み、若手も上司とのコミュニケーションに悩んでいる。お互いがお互いのことを「わからない」と言い合っています。これは言うまでもなく上司-部下の関係として、望ましい状態ではありません。

では、どうすればいいのでしょうか。

キーワードは「研究」です。

上司であれば若手を「研究」することが、部下であれば上司を「研究」すること

が不可欠であると思うのです。

 

私が若手の方から上司との関係についての相談を受けたとき、必ず口にするのが「上司研究をしっかりおこなっていますか?」ということです。そして自分自身の経験を彼らに話すようにしています。

苦手な上司を研究する

私は会社員時代、さまざまな上司の下で働いてきました。その中には相性が合う上司もいれば、そうでない上司もいました。

その中でもとりわけ一緒に仕事をするのが苦痛だった上司が一人いました。その上司が最悪だったのは、すぐに感情的になってキレることでした。部下が少しでも仕事に関する悪い報告をしようものなら、

「だから俺はあれほど言ったじゃないか。いったいおまえは何をやっているんだ!!」などと、思いっきり罵倒するのです。また物忘れも激しく、自分が部下におこなった指示をすぐに忘れてしまうのも困りものでした。

そのため私も含めた部下連中は、みな彼のことを腫れ物に触るように扱ってきました。できる限りかかわらないようにしていたのです。

とはいえ上司ですから、避け続けるわけにはいきません。仕事にも支障を来します。

そこで私はあるとき「このまま逃げているだけでは、状況は好転しない。何とか対処方法を見つけなければ」と考えました。

そしてどんなタイミングのときにどのような発言をすると彼がキレるか、逆に彼がキレにくいのはどんなときで、そのときにどうような発言をすればいいかを、徹底的に研究することにしたのです。

(後編に続く)