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「自分が話したいこと=相手が聞きたいこと」ではない

みなさんは大事なプレゼンの準備を始めるときに、まず何から考えるでしょうか。

多くの人は、「今度のプレゼンでは、何を話そうか」ということから考え始めると思います。

でも実はそこに落とし穴があります。

「何を話そうか」から考えると、自分自身が話したいことが頭の中に浮かんできます。

けれども「自分が話したいこと=相手が聞きたいこと」ではありません。

「当社の商品はこんな機能が充実している」ということをみなさんが話したくて、滔々と説明したとしても、相手はそんなことには興味がないかもしれない。また「難しくてよくわからないな」と思われてしまうかもしれません。

こちらが話したいことと、相手のニーズや知識が合致するとは限らない。にもかかわらず、自分が話したいように話していたら、相手の心に刺さるプレゼンができるわけがないのです。

これが多くの人が、一生懸命プレゼンの準備をしてから本番に臨むのに、成功率がなかなか上がらない大きな要因です。

プレゼンに臨む際にまず考えなくてはいけないのは、

今回のプレゼンでは、何を話そうか」ではなく、「今回のプレゼンでは、誰に話すのか」

ということです。

そして「誰に話すのか」というイメージを明確にしたら、「ではその人に向けて、何をどのように話すか」を考えるという順番になります。

コツは全員に話すのでなく、1人に絞り込むこと

誰に話すのか」を思い浮かべるときにポイントになるのは、どれだけその相手をありありとイメージできるかです。

たとえば聴き手が複数いる場でプレゼンをするとします。

こんなときはその中でもキーパーソン(意思決定者)1人に絞り込んで、その人のことをイメージするようにします。

誰がキーパーソンかわからないときには、メンバーの中でもっとも典型的だと思われる人物を1人ピックアップして、その人をイメージするようにします。

逆に聴き手全員をイメージして、すべての人に対して伝わるように話そうとすると、焦点がぼやけてしまいます。

「結局、何が言いたいプレゼンなの?」ということになりがちです。

一人にターゲットを絞り、その人に向けて明確なメッセージを発信することで、よりシャープなプレゼンとなります。

キーパーソンはもちろんのこと、ほかの聴き手にも「刺さるプレゼン」にすることができます。

相手の心の中にまで分け入ってイメージする

実際に聞き手をイメージするときには、俳優が役作りをするときのように、その人になり切るぐらいに深く入り込んでいくことが大事です。

実は私もプレゼン研修などの講師を務めるときには、受講者の中から典型的だと思われる人物を1人頭に思い浮かべて、その人のことを徹底的に
イメージングするようにしています。

ある1人の受講者が、プレゼン研修を受講するにあたって何を考えているか、その人の心の中にまで分け入ってイメージするのです。

たとえばこんなふうにです。

○会社からの指示だから仕方がないけど、この忙しい最中にプレゼン研修なんて勘弁してほしいな。
○そもそもプレゼンスキルを身につけることって、自分にとってそんなに大切なことなのかな?
○研修中に、講師の人から厳しい指摘を受けて傷つくのはイヤだな。
○でもどうせ研修を受けるのなら、ちょっとでも役立つ知識やスキルを持って帰りたいな。

こうしたことを頭の中でイメージするだけでなく、ノートに書き出してみると、よりいっそうその人に対するイメージが明確になります。

相手のイメージをつかんだら、次は「ではその人に向けて、何をどのように話すか」を考えます。

たとえば「プレゼンスキルを身につけることは、そんなに大切なのか」という疑問に対しては、スキルを身につけたことによってめきめきと頭角を現した人の事例を語ることで、大切であることを相手に伝えようとします。

また「少しでも役立つ知識やスキルを持って帰りたい」というニーズに応えるために、即効性のあるノウハウをわかりやすく伝えることに注力します。

こうすることで、より相手の立場に立った「刺さるプレゼン」をすることが可能になるのです。

「今度のプレゼンでは、誰を相手に話すのか」というポイントを、まず準備段階で最初にきちんと押さえておくことが、本番のときに聴き手の心のツボを効果的に押さえたプレゼンを行うことにつながります。